日本の時計ブランド・オリエントスター。手の届きやすい価格から初めての腕時計として勧められる一方で、高品質な機械式腕時計の作り手ということから、コアな時計愛好家のファンも多い。そんなオリエントスターの魅力はさまざまであろうが、本記事では、文字盤に配されるパワーリザーブ表示にそれを見出していく。
オリエントスターが文字盤にパワーリザーブ表示を配するようになったのは1996年だ。以来、ブランドのアイコンのひとつとして、継続的に採用されてきた
パワーリザーブ表示またはパワーリザーブインジケーターとは、主ゼンマイの巻き上げ残量を示す機構であり、機械式腕時計の「動力の残り」を可視化するものだ。機械式腕時計は主ゼンマイの力をエネルギー源としているため、巻き上げ量が低下すると徐々にトルクが落ちたり、あるいは時計が止まってしまったりする。パワーリザーブ表示は、そうした状態の変化を事前に把握するための指標として役立つ。
もっとも自動巻きを毎日着用しているのであれば、実用性はそれほど感じないかもしれない。とりわけ近年のオリエントスターや約70時間と、十分なパワーリザーブを備えたムーブメントを採用しており、例え週末に時計を手首から外していても、月曜日にはまだ動いている。しかしこの機構は、単に利便性のためだけでなく、「時計との対話」を生む要素と言えるのではないだろうか? そして、ここにこそ機械式腕時計ならではの楽しみや、オリエントスターならではの世界観がある。
なぜパワーリザーブ表示が「時計との対話」と言えるのか? その理由は、この表示機構が機械式時計ならではのものであり、「理想の機械式時計をつくる」ことを掲げるオリエントスターがアイコンとするにふさわしいと筆者は感じたためだ。
パワーリザーブ表示は設計面では制約を伴う。限られた文字盤の中で複数の情報を整理しながら、美しさと視認性を両立させる必要があるからだ。この「小さな機構」には、オリエントスターの技術が詰め込まれている。オリエントスターでは製品の企画開発からムーブメントの製造まで、自社で一貫して行っている。企画の段階からパワーリザーブ表示を前提とし、この表示が全体のデザインや機能と整合性を保ちながら、文字盤上での配置や針の動きも含めて無理のないレイアウトが実現されているのだ。表示機構とそのほかの要素をバランスよく構成できる点は、マニュファクチュールによる高い技術力があってこそである。
なお、オリエントスターの機械式腕時計では、文字盤の12時位置やサブダイアル形式でパワーリザーブ表示が配置されているモデルが多い。しかし、後述するが、決してテンプレート的に配置されているわけではなく、モデルの特性によって針のサイズや目盛りの仕様などが異なり、それぞれのデザインに最適化されている。
例えば「M42 ダイバー1964 2nd エディション F6 デイト 200m チタン」のパワーリザーブ表示は、短くシンプルな針と目盛りで、一方で時分針やアワーマーカーを力強い大きさとすることでメリハリを利かせ、ダイビング中の判読性に配慮していることがうかがえる。